私は夜を乗り越える
ライブ終わりに携帯をみた。
不在着信が10件。
友達が亡くなった。
自ら命を殺めたそうだ。
最後に私が彼に会った時は心身ともに疲れているようだった。
だけど、またねと別れた時の表情は穏やかだったと記憶している。
だからこそ…彼に私は何をしてあげられたのだろう。と考えてしまう
そう考える事はとてもとても無意味な事だとわかっていても、それでも考えてしまう。
初めて会った時の彼は輝いていた。少なくとも私にはそうみえた。
私の勝手な想像だけど、たぶん彼の人生のなかの絶頂期だった。
彼の輝く笑顔は場の雰囲気を明るくした。
私みたいな人に
“一人で寂しくない?”って言っくれる人だった。
だけど、いや、だからこそ、彼は私にもがき苦しむ姿は見せなかった。
最後まで本当の自分を誰にも見せなかったのだと思う。
最後に会って話した事はいつもと同じ他愛のない日常について。
映画、ライブ、本についてで、いつだって私たちはそんな話しかしなかった。
お互いの人生を語るには生きてる場所が遠すぎた。
彼は明日が来ることを望まなかった。
彼は夜を乗り越えることができなかった。
彼は朝を待つことができなかった。
なぜ、なぜ…
そう考えてもなにも答えはでなくて、
私は、ただ朝が来るのを待っている。
明日はきっと昨日より空が綺麗だと私は信じてる。
そして、小さなことでもいい、きっと幸せが私には待ってると信じてる。
私の手元には君と行くはずだったライブのチケットがある。
今年も変わらずに私は君に出会った町にいく。
君が望むことのなかった未来を私は生きている。